2012年11月15日木曜日

論文誌でのLME使用率(1)

なぜ実験データを線形混合モデルで解析しなければならないのかという疑問は私を含めてたくさんの方がお持ちかと思います。

 統計学上の理由や実験計画上の理由が重要であることはもちろんです。それに加えて、実際どの程度この解析が論文の中で使われているのかも気になるところです。すでに多くの研究で線形混合モデルが使用されているならば、それらの論文の結果を適切に読みとるために、解析に関する知識が必要になります。また、文理解研究というフィールドの流れを把握するためにも、線形混合モデルの使用率は興味深いのではないでしょうか?
 
 そこで心理言語学の研究が取り上げられる海外の主要な論文誌における線形混合モデルの使用率を計算してみようかと思います。

 第1弾で取り上げる論文誌はJournal of Memory and Languageです。計算の対象となったのは2011年、2012年および2012年10月現在でIn Pressとして電子版のみが発行されている論文(全部で144本ありました)です。

 このうち、線形混合モデルを使用している論文が42本ありました。使用率は29%です。この値を見る限りではそんなに使用率が高いとは考えられませんね。

 つぎに研究内容について文理解研究かそれ以外かで分類してみました。その結果、文理解研究の論文がが52本、それ以外の研究領域(主に記憶研究でした)の論文が92本ありました。

 この分類ごとにもう一度線形混合モデルを使用している論文の数を計算してみました。すると、文理解研究の論文のうち線形混合モデルを使用している論文が29本ありました。使用率に直すと58%です。また、他の研究領域の論文で線形混合モデルを使用しているのは13本でした。使用率に直すとわずか14%でした。

 この結果から言えるのは、線形混合モデルの使用は研究領域によってばらつきがあること。そして文理解研究は比較的使用率が高いということです。ここ2年を見るかぎりで線形混合モデルを使用している論文が半数を超えています。とはいうものの線形混合モデルを使用していない論文も掲載されているので、線形混合モデルを使っていなければ「絶対に査読に通らない」とは言えないと思います。

 これから他の論文誌でも集計を行って、論文誌ごとの使用率のばらつきについてワークショップで報告できればと考えています。

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