2014年2月21日金曜日

「東大LMEワークショップ」午後の部レポート

先日告知をしました「東大LMEワークショップ」へ参加してきました。
本日は、午後のセッションの概要をご報告します。


1.混合効果モデル分析とt検定・分散分析との違い(神長伸幸)

これは、私の発表です。今回発表した内容は

  1. 混合効果モデルの基礎
  2. 固定要因、特にカテゴリー変数のコーディングについて
  3. ランダム要因、特にランダム切片とランダムスロープの相関について
  4. t検定・分散分析にはない5つのメリット
  5. 2011年以降の混合効果モデル分析の使用状況(出版された論文数による)
  6. 混合効果モデル分析を学ぶポイント
でした。特に上記3では混合効果モデルのメリットとして

  1. 複数のランダム要因を細かく設定できる
  2. 連続量の予測変数をそのままモデルに組み込める
  3. 正規分布以外の分布を持つ従属変数を分析できる
  4. 従属変数に影響しそうな要因を共変量としてモデルに組み込める
  5. 欠損値を含むデータを分析できる
ことを挙げました。また上記6に関して。混合効果モデル分析は、t検定・分散分析から2段階の拡張をしています。ですので、第1の拡張としての線形モデルで学べる内容と第2の拡張としての混合効果モデルで学べる内容を上手く区別した方がいいと指摘しました。

2.Analyzing Reading Time Data with Linear Mixed Effects Regression Models (Doug Roland先生)

混合効果モデル分析を使って既に何本も国際論文誌に論文を載せているRoland先生の発表です。分析の手順や必要なパッケージを示してくれただけでなく、混合効果モデルを読み時間データの分析に使おうとしている人なら、誰でも悩むような問題を取り上げていました。


  1. どうやってはずれ値データを取り除くのか?
  2. ランダム要因の構造をどうやって決めるべきか?
  3. 予測変数は中心化を施すべきか?
  4. 反応時間を対数変換すべきか?
  5. p値をどうやって計算するか?
Roland先生は、それぞれの疑問について、可能な答えのオプションを示しながら、自分ならどれを選ぶかまで説明されていました。こういう悩みに答えてくれる発表は本当に参考になります。

3.眼球運動データの線形混合モデル解析(新井学先生)

眼球運動測定を利用した心理言語学研究で、国際論文誌にどんどん論文を載せている新井先生からは、言語研究における眼球運動研究の基礎と眼球運動データを混合効果モデルで分析する際のポイントについて解説がありました。

特に、視覚世界パラダイムと呼ばれる比較的新しい手法の眼球運動測定実験では、視覚文脈内の特定のオブジェクトをあらかじめ決めた時間帯に見ているか否かを検証します。そのようなデータは、定義上、正規分布をとらないため、一般化線形混合効果モデルを利用しなければなりません。新井先生からは、エンピリカルロジットという対数オッズの計算方法の紹介やランダム要因の構造の決め方に関する実践的な発表がありました。

Roland先生と新井先生の発表はどちらも査読に耐える解析とは何かをご自身の経験から解説してくれたことが印象的でした。このような勉強会がこれからもどんどん開かれるといいなと思いました。


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