既に出版されている論文を見てみると三つの対処法があるようです。
A:t値の絶対値が2より大きいときは十分に効果が大きいとみなす。
B:マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション(MCMCと呼ばれます)を実施して傾きの信頼区間を求めて有意性を調べる。
C:固定因子の傾きのあるモデルとないモデルによる推定を行い、二つのモデルを適合度で比較する。
ではAの対処方法をとる場合ですが、今回の例ではt値が43.7と非常に大きいので、これを主張することができそうです。
Bの対処法ですが、languageRというパッケージに含まれるpvals.fnc()というコマンドを使うと
MCMCによる推定ができます。今回の例でMCMCを実施すると
MCMC(model.3)
$fixed
Estimate MCMCmean HPD95lower HPD95upper pMCMC Pr(>|t|)
(Intercept) 400.29 400.35 394.32 406.69 0.0001 0
CondDummy 48.15 48.14 45.14 51.25 0.0001 0
$random
Groups Name Std.Dev. MCMCmedian MCMCmean HPD95lower HPD95upper
1 Subject (Intercept) 20.8991 8.4280 8.4860 6.8950 10.1637
2 Item (Intercept) 8.0714 5.9127 6.0536 3.8255 8.5196
3 Residual 6.6118 9.3065 9.3425 7.9304 10.7475
上記のような出力結果が得られました。四行目がCondDummyの傾きの推定結果です。
95%信頼区間が45.14~51.25でした。pMCMCがいわゆるp値で0.0001となりました。
一点注意が必要なのは、languageRを利用したMCMCは一部のモデルではできないことです。
できないのは切片と傾きの両方を仮定し、かつそれらに共分散(相関)を仮定している場合です。
(上記のmodel.1とmodel.2がこれに該当します。)
Cの対処法をとる場合、CondDummyの固定因子を含まないモデルで推定してみます。
model.null = lmer(RT ~ (1 | Subject) + ( 1| Item))
次にこのモデルと先ほどのmodel.3を比較します。
anova(model.3, model.null)
Data:
Models:
model.null: RT ~ (1 | Subject) + (1 | Item)
model.3: RT ~ CondDummy + (1 | Subject) + (1 | Item)
Df AIC BIC logLik Chisq Chi Df Pr(>Chisq)
model.null 4 1390.7 1402.6 -691.35
model.3 5 1050.6 1065.5 -520.31 342.08 1 < 2.2e-16 ***
---
Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
出力結果を見ると、χ二乗値は342.08、自由度は1、p値は< 2.2e-16***と非常に小さくなることが示されています。
今回の例では、いずれの方法をとっても条件差が有意であると言えます。
解析は以上になります。
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